タイでの臓器移植。その心臓は、生きたままの少女から取り出された。映画「闇の子供たち」で描かれたのはフィクションだが、幼児の人身売買が現実に行われているこの世界のどこかで、明日にでも起こりうることだ。タイを始め東南アジア、中南米では夥しいほどの幼児が売り買いされ、日本人や欧米人に買春され、他国に移送され、強制労働させられ、性的に搾取されている。
『闇の子供たち』には、フィクションとは言い切れない真実が含まれている。その衝撃の大きさに、バンコク国際映画祭では、決まっていた上映が直前になって中止された。それ以後、タイでは上映できない状態が続いている。上映されることは国辱だ、という声さえ、タイから聞こえてくる。
命の問題を含め何でも金で買えると思いがちな、日本や欧米の人々の闇。そして、わずかな金のために命そのものを差し出す、第三世界の人々の闇。その闇が繋がっていることを、『闇の子供たち』はえぐり出した。この映画がタイの人々に届かないのは、悲しむべきことだ。
監督の阪本順治氏、原作の梁石日氏を招き、映画に込められた思いを聞く。マフィアに襲われるリスクを負いながらのタイ現地での撮影をプロデュースした、唐崎正臣氏も急遽来日。タイ在住三十年の唐崎氏からは、タイの生々しい現実が語られる。
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