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         第二次朝鮮戦争は割に合わない、アホな戦争
                               塩見孝也


 「日本大衆」さんへ

 貴兄の問題提起、質問は非常に良い的を絞った質問です。日本大衆に答えるつもりで答えます。

 貴兄と僕の朝鮮観は違います。しかしさし当たってこれを前提とせずとも貴兄の質問、意見には答えられ、半分ぐらいは客観的に議論できます。

 最大の問題は「朝鮮の悪」を取り除くための米国や韓国の、そしてそれを支える日本の戦争は犠牲が多すぎ割に合わない、と言うことです。

 朝鮮半島の歴史、地理的条件、「北」社会の政治、社会構造・指導部と民衆の関係、南北に分かれているが悲惨な同胞戦争を二度としたくないと言う朝鮮人の欲求、戦後の難民も含めた再建の甚大さ、経済的採算等々、この点では冷静に論争して行けば、イディオロギー的立場は違ったとしても意見一致します。

1. ひとまず戦争推進の立場で議論を進めてみましょう。

 第二次朝鮮戦争はアフガンのように「犠牲少ない」「簡単な」戦争と全く違い、アフガンより数十倍手強いイラクよりも更に「玉砕覚悟」の朝鮮国は更に手強く、犠牲が多いと断言できます。貴方はアフガンのように簡単に潰せると思っているのでしょうか?そんなに単純ではないと思う。

 アメリカの「先制」の一撃で「北」を壊滅出来ません。朝鮮はそれに、ずっと備えてきたこともありますが、「先制」は必ず察知されます。そうすれば百万の軍と臨戦態勢が米軍、本土、「南」、そして日本に発動されます。「南進」で一挙に戦争になります。  無防備な日本もミサイル、テロの対象になるし、原発は格好の対象です。凄い被害となるでしょう。アメリカも例外でなく、9/11以上の被害となるでしょう。 

「ソウル、東京、アメリカ本国を火の海にする」も玉砕覚悟なら,必ずしもほらばかりとは言えず、若干はあり得ないことではないのです。

 つまり、旧式な軍隊と装備、長期の戦争遂行能力の脆弱さは指摘されている通りですが、それでも一方的に北だけがやられ壊滅するシナリオは到底考えられない、ある種の「共倒れ」になると言うことです。

   勿論「北」はそれ以上の兵士が死に、民衆の死は「南」の数倍は行くでしょう。「北」は敗北し、壊滅するでしょう。

 この犠牲で韓国軍2,30万〜50万が死にます。200万ぐらいの民間人も死にます。

   半島の山河は荒廃し、再建は容易でなく、難民は日本等隣国に流出するでしょう。

 再建は日本が担うこととなれば日本はこの不況に加え、更にダメージを受けるでしょう。石油のない「無資源国」の朝鮮にアメリカは経済的には興味を示さず、きめ細かい熱意ある再建行動はとりません。

 こういう事態が僕流にシュミレーションされますが、これは僕だけの特別なものと言えません。多少は誇張されているでしょうが、冷静に考えればこうなるのです。

 損害が多すぎる、こんなアホな割に合わない戦争はしないに超したことはない。これが現実的な判断です。

2,何故このような「玉砕覚悟の軍隊とこの国家体制があり、そのシステムに協力したり、従う国民がいるのでしょうか」これが議論の第二の核心ですが、ここでは僕と貴方のイディオロギー、価値観に関係する事となりますが、マー聞いて下さい。

 朝鮮国は「日本帝国主義をパルチザン戦争で打倒した、アメリカの反革命・侵略を民族戦争で打ち破り、排除した」ことを、民族的誇りにし、中ソの支配主義にも屈しない、等を誇りにしている国です。このような民族の「独立自主、外勢排除、民族統一」を国家理念、国是としている国です。ここには沢山の虚構や神話がない交ぜになっており、割り引いて考えなければなりませんが、国家理念の本質に於いてはその通りなのです。

 だから、主権を侵す侵略には「最後は敵わぬまでも玉砕覚悟でもパルチザン戦争で闘う」事を国民的信念としているのです。形骸化し変質しかかっているか、既に変質したかも知れませんが、理念としてはこういう事なのです。

 「苦難の行軍」の3年間を経て、今は「強盛大国」を目標に置いてます。この要に「先軍政治」つまり「主権を守る為の軍事優先」の政治を据えています。

 この理念、目標、政策は国民に限りない負担、犠牲を強いていますが、又これを強引に貫徹しようとするところから起こる、貴方が指摘するような、そして僕も同感するような、非道、不当な政治、間違った政策が極限に達するほどまかり通ってもいます。

 しかし、チュチェの国家理念は理念それ自体としては正しく、現実的根拠を持っており、それは強権、独裁的、全体主義の恐怖政治、軍優先・民の福祉犠牲、経済軽視の飢餓政治を伴ってはおれ、それに国民が不満は持っておれ、それでも、それは国民には未だ効力があり、その大多数は労働党と国家を信じ、ついて行こうとしている、現実があるということです。

 指導部はこの理念を振りかざして、国民に耐乏を強制し、「国民の犠牲、今はやむなし」としているわけです。

 結論的に言えば、朝鮮国は国家存亡の危機、崖っぷちに立ち、その内政における功罪は相半ばするところまで来ていますが、未だチュチェ思想は死に絶えてはいず、それが本来の姿で蘇る可能性を有している、と見れることです。

 こんな時、アメリカ帝国主義が傲慢に挑発し、戦争危機を煽り、戦争を仕掛けるなら、指導部は「窮鼠猫を噛む」形で反発し、国民は逆に指導部の周りに結束します。

 指導部の誤った側面をに逆に許容、甘受します。

 「先軍政治を止めれば良いではないか」と言う意見もありますが、これはアメリカの主権侵害、戦争挑発、侵略の危険が去らない限り、朝鮮国国民が、これまでの歴史、伝統があるが故に、この路線をにわかに捨てたり、これを推進している指導部を「下から打倒する」ようにはなりません。

   この可能性は今のところ殆どありません。

 指導部の路線対立からの分裂の事態と言った「政治クーデター」の可能性の方がまだ高いですが、それも今は考えられません。  このような事態は朝鮮国が要求するように「不可侵条約の締結」等が実現し、侵略戦争の危険がひとまず去り、社会に余裕が出てきてからの事です。

 余裕が出来るに連れ、朝鮮国国民は、周囲の状況も知り、自主性も発揮し、民主化、改革、開放を必ず要求するようになります。そしてそれが、朝鮮国国民自身の手によって、現政権を変えて行くか、とっかえてゆくことを産み出してゆくでしょう。   こういう訳で、外圧が「先軍政治」の理由になっているからで、それはそれなりの根拠を持っているからです。これまでの朝鮮国の歴史、伝統と現実からしても、にわかにはこの路線は変わらないのです。

 この事態は戦前の日本軍国主義の敗退時にいくらか似ています。あの時共産党は壊滅し、敗戦を革命的に迎える可能性は全くなく、国民は大本営発表しか知らず、家族、パトリ(源郷、故郷)を守るため、特攻隊に志願したり、アジア各地で玉砕戦を敢行しています。

 歴代のアメリカ政権はこのような朝鮮の現実を見誤ってきました。とりわけ中国の路線転換、ソ連・東欧の崩壊の事態後見誤ってきました。朝鮮国をなめてかかっていたのです。

 しかし最初は勢い込み「人もみにつぶそう」と出るのですが、現実を想い知らされ、徐々に路線転換してきました。ブッシュ、クリントン、そして現在の二代目ブッシュです。典型はクリントン政権です。あの政権のペリー国防長官は最初鷹派の最強硬派でしたが、最後は現実を知り、国交正常化をやろうとするところまで軟化したのです。

 94年の核危機、カーターの訪朝ー金日成との会談が旋回点でした。あのドラスティックな転換に匹敵するような転換がブッシュ政権に於いて起こる可能性は十分あるのです。

 今凌ぎを削る和戦両面の、一方でイラク情勢をにらみながら米朝の駆け引きが展開しています。

 この行く方について考慮に入れて於かなければならないことが2〜3あります。

 先ず、中国、ロシアは極端な極東の緊張、変化を望んでいないことです。また、この戦争のとばっちりを受けたくない、と思っていることです。

 更にアメリカは表面強面(こわもて)ですが、石油等資源のない朝鮮に対して甚大な犠牲を払うことは採算に合わないと、と言う判断に行き着く可能性が大ということ事です。

 そして一番大切なことは、韓国民衆とその指導部、政権が朝鮮戦争後の歴史の中でアメリカの代理戦争的な「同胞相食む戦争」を全然望んでない、と言う事実です。資本主義の発展とそれと一体の民主化闘争の前進の中で、余裕もでき金大中、のの二代の「太陽政策」「包容政策」を遂行する政権を産み出したりしていることです。

以上の2点から戦争をアメリカは起こせないし、起こさない可能性大と判断できます。
                               2003・2・11