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*イラク情勢について語る

橋田さんと奥さん、そして高遠さんについて 塩見 孝也


 僕は亡くなられた橋田さんと奥さん、そして高遠さんについてどうしても記しておきたいのです。

 僕は、高遠さんにしても、橋田さんにしても誰かに言われるまでもなく、自分で自主的に「この行動が正しい」と自負し、行動し、その行動にはしっかりと責任を持っており、危急の際の覚悟もしっかり固めておられていた人達と確信しています。

 組織に指令されたりしたわけでもなく、金目当てや売名目的などかけらもなく、自分の人間としての誇りに賭けて、日本人、日本民衆として、なすべきことが「これだ」と信念し、仲間達とともに自主的に、自分の置かれている条件で「できるだけの事をしよう」と行動した人達と思います。

 お二人とも「ストリートチルドレン(戦争孤児)」や戦争犠牲者のイラク民衆の子供達に心を砕き、実際、力になっています。

 橋田さんの遺志は立派に受け継がれ、モハマド君の障害は取り除かれつつあります。

 このささやかな行動が、結果として今後どれほど日本人とイラーキー達との相互理解、国際連帯に役立つか計り知れないと思います。

 残念ながら、橋田さんは悲運にも凶弾に斃れてしまいましたが、このような行動が日本人とイラク人の心と文化を潤わせ、豊かにし、沢山の「橋田さん」を生み出してゆくことを僕は確信しています。

 さすがに、冷静、沈着な奥さんも、銃弾で撃ちぬかれ、血に染まった夫の帽子を見て、遂に涙を流されました。

 お二人夫婦は、まさかの時の覚悟を確認しあって人生を送ってこられた人なのでしょうが、僕はあの奥さんの懸命に感情を抑える姿の中に女性としての、日本人の女としてのすばらしさを目撃しました。

 「ブルーターク英雄伝」に出て来る英雄など目じゃないのです。仮に現代に“英雄”と目される人が居るとすれば、僕らはこのような人々を日本人の“英雄”としなければならない、と思います。

 このような人々の「地の塩」となるような行動が積み重なって、僕らの「日本」は「徳高き信義ある日本」と国際的に見なされてゆくのではないでしょうか。

 日本人はこれまで奥平、安田、岡本君のようなアラブと連帯した立派な人々を擁していますが、高遠さんや橋田さんは21世紀の舳先に立って、この人々のスピリットを継承しつつ、よりピュアーに、よりさりげなく、より足を地につけて、より気負いを見せず僕らの進むべき未来を指し示してくれました。

 今反戦闘争を闘う青年達には、確かに頼りないところもありますが、その思想的核はその自主性において、未だ僕ら赤軍派や僕らの時代の青年達が完全には払拭しきれてなかった権威や教条への依存心を拭っています。

 願わくば、その核をしっかりと哲学化、思想化しつつ、独立自主の誇り高き日本人、日本民衆として進んで行ってもらいたいものです。

 高遠さんらは、始めから自己責任を覚悟していたのであり、小泉らに救援を愁訴するなど眼中になかったと思います。

 それを日本国公民である家族が公民の守護者たるべき政府に当然の権利として救援を願ってきたことと小泉らが意図的に混同させ、「自己責任論」を振り撒くのは全くのペテンと思います。

 小泉は自己の不当な「自衛隊海外派兵」に、この「拘束」問題を機に非難が集中するのをかわすべく、例のごとく民衆愚弄の手法で、この小道具をひねり出してきたと言えます。

 このお二人に比べ、小泉の何と、品性低きことでしょうか。
                6月12日      塩見孝也(元赤軍派議長)