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「図解 資本論」(原著 マルクス 編著 久垣啓一)について
「資本論」学習の良い参考書です。
2009年 8月6日
塩見孝也
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「図解 資本論」(原著:マルクス、編著:久垣啓一)が、先日イーストプレス社から送られてきました。
良き「資本論」学習の参考書になると思いました。
特に、図解で、初心者に分かりやすく説明しているところに、工夫が窺えます。
巻頭での「三つのポイントで資本主義のシステムが丸分かり」の文章は、非常に、分かりやすく「「資本論」の内容、意義が簡にして要に語られています。
また、7つの各章展開に平行しつつ、7つの「資本論裏話」も有意義ですし、目次の後に、僕は、その半分くらいしか読んでいませんが、八つの参考文献が挙げられているのも、まずまず、妥当なところと思いました。
しかし僕としましては、各章の内容まで精読していませんし、参考文献の日本共産党関係については、よく読んで、評価を確定する必要があることは、ここで断っておきます。
いずれにしても、このような「資本論」解説、参考文献が沢山世に出て、労働者階級が、階級意識を磨いてゆく事は、時代が時代だけに、僕としましては願ってもないこととして大歓迎です。
この社が、先行して出版した「資本論 (漫画で読破)」も、この本のごとく、当世風の本造りの企画やデザインらのセンスの延長ですが、これは、この前回の試みの“いまいち”さ、“もう一つ”さを教訓にして、ぐっと「資本論」紹介に正攻法で踏み込んでいると言って良いと思います。
久垣氏とイーストプレス社の労を多とします。
とはいえ、読者には、やはり次のことだけは言っておかなければなりません。
参考書、解説書らは、この意味でそれぞれに意味がありますが、あくまで参考書、解説書であって、マルクス思想としてのマルクス経済学:経済学批判(資本主義批判)は、あくまで原本、原文(といって、日本語訳、というところに今のところならざるを得ませんが)をじっくり読んでゆくことで、知り、理解し、摂取、応用するに「如くはなし」ということです。
参考書、解説書を読んで、「資本論を読んだ」としたり、それで終わらせたりしないで欲しいと、ということです。
何よりも一巻ぐらいだけは、月一回ペースとすれば、1年か、1年半くらい掛け、学習会、研究会といった形で、集団で、原文を読み合わせ、討論もしつつ、読み切って行くことです。
この作業は、根気と時間、手間閑のかかることですが、あえて、この作業に挑戦することを要望します。
それを通じて、マルクスの「商品と貨幣」の章から読み込み、「貨幣の資本への転化」、「剰余価値の形成」、「資本の蓄積」、「流通過程や資本蓄積の総過程」といった形で読み進み、彼の分析と綜合の仕方、論理の運び方、彼が使ってゆく諸概念の意味の理解とその駆使の意義の理解、その説明の仕方や内容の摂取、文章、表現における歴史と論理の関係やその妙、文風、そのバックにある彼の前のスミスやリカードら「国民経済学」という彼が継承し、乗り越えてきた、一応、労働価値説に立脚する経済学も含めての彼の経済学の形成の仕方やプロセスや内容の理解、あるいはこの経済学との関連、あるいは、これと一体的である彼の哲学、歴史観、文学や芸術観や論、その他の学問分野の奥深く、広い素養との関連、そうしえてきた彼の感性、科学的展開力や厳密な論理性、資本主義を止揚して生まれる共同体(共産主義や社会主義社会のこと)の基本構図、構想、あるいは政治学などを、マルクス思想、世界観として、直に掴み取って行って欲しいのです。
評注は、極めて重要で、これを読み落とすわけには行きません。ここでは、正文では、はっきりしない事も、9割がた分かります。
読み進んで、読みきってしまえば、マルクス経済学の全貌、ガイストらが自分として分かります。そうすれば、それを使って、運用、応用が出来るようになります。
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塩見孝也 |
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