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鈴木邦男著:「魂の革命家、小林多喜二:『蟹工船』を読み解く」に注目を!

是非ご一読ください。

2009年 8月5日

塩見孝也


一水会顧問、鈴木邦男さんから、2ヶ月前くらいか、「魂の革命家 小林多喜二 『蟹工船』を読み解く」(データハウス)が送られてきました。
 鈴木さんの力作ですし、ある意味では、民族派、鈴木邦男の思想的到達地平が示されていると思いました。


 普通、民族派右翼の場合、「民族」を丸抱え的に論じ、その内部の「階級構成」について努めて避けようとします。保守反動の右翼の場合は、さらに、「階級構成」を消し去る分だけ、「国家(国体)の至上性」を強調します。

 ところが、彼は、資本−賃労働関係、つまり資本主義所有ー生産関係を論じ、民族の階級構成の把握の分野では、ここでは、彼がプロレタリアートの立場に立つことを表明しているように思います。

 天皇・天皇制に関しても、民衆を抑圧したり、階級意識を曇らせ、階級協調を促すような政治的役割に関しては、否定的、批判的に論じています。

 とはいえ、彼は、彼が尊敬する戦前右翼先輩、里美岸雄に見習って「天皇」だけは必死で、最後の一線として残そうともしていますが。
 
 彼のリベラルで、民主主義的体質の必然的到達点と言ってしまえば、それまでのことですが、論じる対象が「蟹工船」「小林多喜二」であれば、また、この作品がもてはやされる経済、社会情勢との、ある面での共通性と言える、当今の経済、社会情勢における、労働者の貧困、とりわけ格差社会で犠牲になり、首切りと無権利にさらされている派遣労働者、「資本論」で言えば、「相対的過剰人口化」されている労働者の状態を考えれば、彼がここまで踏み込まざるを得ないのも、むべなるかな、と思いました。

 対象の性格、現今の労働−社会状況を考えれば、批評の必然的に赴くところ、と言えますが、それでもよく踏み込んだものと思いました。

 さすが、わが友、鈴木邦男です。

 僕は民族派のなかから、このような民族派(青年達)が、彼に見習いつつ、輩出する事を期待したい。

 一読をお勧めいたします。

塩見孝也