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洞爺湖G8サミットを糾弾する(前回の補足) 

再び資本主義の寄生性の権化、鬼っ子、投機資本を批判する。

2008年 7月 5日

塩見孝也

●再び原油高の原因を考える。

さて、前回の日記、「洞爺湖G8サミットを糾弾する(下)」でも触れましたが、原油高騰の原因です。


これについて、僕は一方で産油国、OPEC(おぺっく)の「意識的減産(?)」という名の輸出抑制による「価格高騰」の問題と他方での、石油証券市場に流れ込む巨大な投機資本の問題を挙げました。

この問題はアレか、コレカの問題ではありません。相互に関連しつつも、又次元の違う問題も含まれて居ます。

OPEC(おぺっく)が現今の世界情勢に規定され、石油メジャーや列強へ増産を約束し、一応そうしようとしている事実もあります。

しかし、OPECの内情も複雑で、それに応じようという動きもあれば、他方では、アメリカら列強に対して、かつての第三世界側として、帝国主義に、植民地として「犠牲的基底」とされたた途上国側側として、報復しようとする動きもあれば、純粋ブルジョア的に独占価格として、吊り上げオイルマネーをもっと、もっと貯め込んでゆこうとする動きもあり、その内情は、今はわかりません。

アメリカ帝国主義と全面的対決関係にあるイランなどのように、列強の圧力、軍事的攻撃をかわすために、逆に、増産を約束する国もあります。

OPECは列強側と同じ思想を持つサウジアラビヤ、クエート、イラン、(イラク)、インドネシアや、チャベスのベネズエラのように列強と対峙している国もあれば、その他、リビア、アルジェリア、ナイジェリア、モーリタニア、カタール、エクアドル、ガボン、アンゴラなどの13か国が参加しています。

石油産出で、OPECの比重が、相対的に低下した、ことは指摘されていますが、尚、大きな比重を有していることは確かです。

これらの国が、ある種の「独占価格」を持って、石油価格を吊り上げるとすれば、それが列強先進国を危急に追い込むのはともあれ、世界の民衆の生活を苦しめるようになれば、それは一種の原爆を落とすような無差別攻撃であり、「世界プロレタリアート」として、由々しきこととして、見守ってゆくべきと考えます。

それに、こういったOPECの状態を、石油メジャーが表面はともあれ、陰に陽に利用し、価格高騰を促進ている面もあることも押さえられて置くべきです。

●投機資本は資本主義の鬼っ子であり、寄生虫である。

他方、石油証券市場で巨大な投機資本が動き、それが価格高騰を招いていることは確実です。これを列強は、自由主義を標榜している以上、統制できないわけです。

なぜなら、統制せんとする国家そのものが、計画的に投機をやり、債権、証券を買い込んでいると言えるからです。

ですから、投機資本の規制が、サミットの場で、声高に叫ばれても、それは、ざるで、国家は、野放しにしているからです。

まして、新自由主義を標榜しているグーローバル資本主義の場合はなおさらのことです。

この動きが、ロシアなどOPECなどに加盟していない産出国の動きも又規定します。

であるならば、自分は勤労もしないで、「実体経済」、――これを一般に言われている「ものつくり」の生産、経済と今はしておきましょうーーにはなんら参与しないで、ただただ情報を集約し、確実な価格高騰を当て込み、金を動かし、適当な時に売り買いし、大もうけせんとする投資ファンドらのトレーダー達やその組織を、僕等は資本主義の寄生虫と言わなくして、なんと言ったらよいのでしょうか?

この世界でもっとも有名になったのが、投機家、ジョージ・ソロスです。

彼は、19992年のポンド危機の際は、27億の資産を有すイングランド銀行を危機に追い込み、210億ドル、、儲けた、と言われています。

1997年のタイバーツの暴落に端を発する東南アジア諸国の通過危機に際し際しては、マレーシアを危機に追い込みました。

「我々は、国つくりのために40年間、働いてきた。そこに、一人の人物がやってきて一ヶ月で全てを破壊した。ほんの数日間で、ジョージ・ソロスは幾十億もの損失を我々に与えた。」これは、当時の首相、マハティールの怒りの言である。

このような、たくさんのソロスが、今では、無数に金融、証券市場で暗躍しているわけです。

しかし、この寄生性は、彼等、トレーダーたちだけではないのです。

先進資本主義の国家そのものが、利札きりの寄生性国家に成り下がりつつあり、国家そのものが、サブプライムローンの問題でも見てきたように、投機国家、カジノ国家に変質しつつあること、このことです。

この傾向は、金との兌換を停止し、一種のドル本位制・フロート制に戦後直後のブレトンウッズの体制から移行した1971年以降、そして、植民地体制が消失し、世界単一の世界市場が生まれ、それに呼応して、資本の直接的生産過程が国際化し、国際貿易機構、金融・債券、証券市場が資本主義的に整備されて、つまり、ネオリベラリズム、グローバル帝国主義の段階が到来した情勢以降、デリバティブとかヘッジファンドなどの決済方式が通用化してゆく状況で、それは、投機資本が徘徊する絶好の場を与え、国家そのものが寄生化する趨勢を作り出していった、と言えます。

現在のアメリカはローマ帝国の末期の状態と酷似している」とは、よく言われている言説です。

ローマの支配階級は、貴族、言うならば地主階級です。この連中が、市民の義務として兵士となり、兵役を担った過去など忘れ去り、軍事自身も鍛錬せず、地代のみで食ってゆき、奢侈に耽溺してゆくようになった、ことを意味しますが、それに相当するのが、現代の投機資本の階層と言えます。

この、階層は、階級的に見れば、資本家階級を構成する一部の階層といえないことはないのですが、そういうより、不労で金を巻き上げ、収奪する有産階級の一部と言ったほうが精確かもしれません。

資本と賃労働の関係に寄生し、資本主義が現段階のようにまで発展する中で、資本主義から生まれながら、資本主義に寄生し、それを、内側から蝕み、腐朽化させてゆく、資本主義の鬼っ子、資本主義の寄生虫そのもの、と言わなければなりません。

丁度、ローマ軍兵士がゲルマンの庸兵に変わり、世界覇権の用を果たさなくなったように、今、米軍兵士もそうなってゆき、支配階級は展望を見失い、惰弱に流れ、寄生性を強めているのです。

労働者階級は、道徳的にも、このような最低の連中、階層を決して許してはならないのです。

資本主義の生命力は競争、そしてその凝集としての戦争です。

ところが、そこに「国民」、実はプロレタリアートを動員できなくなり、兵士は志願兵制で募集され、その戦争が、侵略戦争を貫徹し、領土拡張を行なえないようになれば、その生命力は萎えて行き、その代わりとして、このような寄生性を旨とするこのような階層が世界中に広範に生まれてくるのです。

丁度、ローマ軍兵士がゲルマンの庸兵に変わり、世界覇権の用を果たさなくなったように、今、米軍兵士もそうなってゆき、支配階級は展望を見失い、惰弱に流れ、寄生性を強めています。これは、兵士たちの責任では、ほとんどないのですが。

そのようになれば、国家もまた寄生的な国家へと変質し、やがては没落してゆきます。



●それでは、この寄生性はどこから生まれ、誰に寄生しているのでしょうか。

結論から言えば、生産の担い手、労働者階級の生み出す剰余価値を搾取する資本家の特殊な一部として、その剰余価値の源泉的な生産者、労働者階級に寄生している、と言えます。

人間は労働すれば、一定の生産力の段階では、必ず剰余労働をやり、剰余生産物を生み出します。それは、自己の再生産に必要なだけではなく、より豊かな生活を人間が目指そうとするからです。

資本主義社会では、この剰余労働は、生産手段の所有者、資本家に略奪される剰余価値となります。

その剰余価値は、現実には、大きくは資本家の利潤と銀行・金融資本の利子を中心とする利潤、地主の地代に分けられます。

ここで、注意しておくべきは、もともと労働者階級が労働し、生産することによって生まれた剰余価値が、利子の根元であるにも関わらず、地代の寄生性は一寸考えればすぐ分かることですが、利子の方は、銀行業務から生まれたような幻想を生み出すことです。

産業資本主義の段階から、労働者を搾取し、その利潤を蓄積してゆく資本の集積・集中が進んで、資本主義の独占資本段階が生み出されてゆきます。

その資本蓄積は、一つは株式資本形式を取り、債権、株式の証券市場を生み出してゆきます。

もう一つは、始めは資本の遊休資本を仲介する控え目な役割であった銀行が、産業資本と結合し、その経済活動に、利子を蓄積した資本力で持って、産業資本の経済活動に介入し、より多大な資本を蓄積し、また、株式市場の債権・債務も差配するようになります。

このような、段階で銀行資本は金融資本となり、それも競争から、勝ち抜いた10行か、20行くらいの巨大な独占的な金融資本になって行き、これが全産業をコントロール、支配するような権能関係を身につけてゆくわけです。

このような関係構造を「金融寡頭制」と言いますが、このような資本主義の独占資本主義の段階では、先述した債権、証券市場の独自な発達が進展してゆきます。

債権・債務の証書や証券は、本来紙切れに過ぎないのですが、銀行や産業資本の信用に基づく定期的な配当を請求する権利が確認されていますから、あたかも利子を生み出す資本のようにみなされます。

しかし、価値もなければ、資本でもなく、資本化されるだろう、と思われる架空の資本価値ですから、実際には、ないにも関わらず、あるかのように擬制化されてみなされます。

この意味で、利子を生み出す利子生み資本が、本当は労;@働者の剰余価値を源泉としていることが、その資本が生み出したかのごとく思われる、それ以上に、この債権・債務の証書や証券は、その儲けの価値の出所を覆い隠してしまうのです。

グローバル資本主義の段階では、世界統一の債権、証券市場を完成させているが故に、それもフロート制であるが故に、このような膨大な金利生活者の階層は、金儲けの亡者として、世界市場を投機資本として徘徊し、資本主義を混乱させ、腐朽させ、挙句の果てには、彼等の本当の源泉者、労働者ら民衆を苦しめ抜いてゆくわけなのです。

この金利生活者―投機資本の階層(基本的には資本家階級の構成部分)が、始めは金融恐慌の導火線となり、資本主義を危機に追いやり、それが、実体経済の分野に波及し、遂には、未曾有の世界的規模の(過剰生産)恐慌に連なってゆく、というわけです。
 当然にも、彼らもまた、このプロセスの過程で墓穴を掘って行くのですが。

以上のよう原油高騰・エネルギー問題、食料危機の構造は明らかになるわけですが、このような資本主義の生産関係からの問題と同時に、資本主義の生産力の性質、つまり化石燃料、石油に今の現代社会が依存している問題が他方であります。

この経済のエネルギー源が化石燃料に限定される構造で産業革命が行われ、それが資本主義生産力として、後々まで利用されてきたことが地球環境の壊れ、温暖化らの環境問題の原因であることは、明らかですが、これはサミットを考える主要テーマとして、次回稿で展開しますが、ここでは、最後に次のことは確認しておくべきと思います。

石油産出国が、オイルドラーを無制限に蓄積してゆく、問題です。資本主義の下では、それは、是とされていますが、決して、そこに留まってはならないことです。



塩見孝也