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「帝国」や「マルチチュード」で有名な、日本でも広範な読者を持つ、イタリア人哲学者のアントニオ・ネグリ氏との討論会が、3月28日に「日本外国特派員協会」でおこなわれることになっており、私もそれに出席する予定でした。
しかしながら、ご存じの様にネグリ氏の来日が不可となりました。彼との、議論を楽しみにしていましたが、残念です。
20日の毎日新聞(朝刊)によると「日本法務省は入国の条件として、元政治犯だと証明する資料の提出を求めたが、この資料の入手が困難だった。出入国管理法は、一年以上の懲役か禁固の刑を受けた人物の入国を禁じているが、政治犯の入獄は、例外として認めている」
「ネグリさんは近年、中国や韓国など22カ国を訪れている」と報じています。
僕は、20日、午後、関係筋から連絡を受けました。
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入管法は、根本的なところで、問題がある法律で、これによって、これまで在日の人の朝鮮半島や外国との往来は、極端に制限されてきまた。指紋押捺問題もありました。
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最近では、外国人の入国が、写真容認でないとできない問題もあります。
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幻想としての「純粋日本人」なる「純血主義」なるもの保持し、それを“国家至上”で集約しようとする、(それを、前提として、グローバル化の時代にか“開い”てゆく)基本的戦略の下での、巧妙な対応です。
このような、出入国の蛇口をしっかり、握りつつ“開く”、列島という島国環境を利用し、「外」から押し寄せる、「異物」を「波打ち際」で、排除する、日本国家権力、官僚の伝統的やり方といえます。
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「元政治犯の証明」といっても、日本国では、それは「選挙違反者」などに限られ、革命家、革命的な思想家などは、「テロリスト」の類とみなされ、全くアウトなのです。
安倍政権の時の昨年、僕は妻とパック旅行で韓国観光に出向きましたが、金浦空港で入国を拒否され、その日のうちに、強制送還されました。
これは、韓国入管局の言では、日本国政府が送ってきた、「“危険人物のリスト”に僕の名前が、掲載されているからだ」とのことでした。
4〜5時間もやりあい、いろんな説明をし、韓国当局は、反論しえなくなったのですが、引き上げざるを得ませんでした。
もう少し、粘って、日本大使館から、人を呼び、問題を公然化してゆく対応が必要だったと思っています。
煎じ詰めた、彼等の主張の核心は、「日本国政府が提起してきていたからだ」に尽き、それで、韓国入管局は、機械的に処理していた、印象を受けました。誠に理不尽極まる安倍政権の対応といえました。
一方では、パスポートを発行し、「日本国公民であること、関係各国に、便宜、保護を要請するよう」声明しておきながら、他方で、裏で「要注意人物として入国を許可しないよう要請する」など、でたらめ極まる対応をしてきたわけです。
帰国して、責任の所在を安倍内閣、法務省、外務省に絞って、民事訴訟、損害賠償の裁判を考えたのですが、他のもろもろの事情で、今もやり切れていません。
僕は、日本国公民の「パスポート」を所持し、かつて、全共闘や「過激派」指導者が、不許されていた台湾やタイにも行けており、イラクは勿論、西欧のイタリア、スペインやトルコなども可でした。
多分、無理なのは、「国益に反する人物」を公然と宣言する、米国だけで、民主化された韓国は、完全にOKと思っていたのです。
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この件は、これ位にして、押さえておくべきは、こういった韓国すらが、ネグリを入国させて居るのに、日本は不許可にしたことです。
これは、「(対テロリスト)共謀法制定」感覚にも通底しています。
或いは、失言の“お騒がせ大臣”、鳩山法相の政治、思想感覚も作用しています。
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しかし、最緊要な問題は、7月の洞爺湖サミットを展望しつつ、法務官僚、検察、警察、公安が、沢山の外国人がやってくるのに対して、予防弾圧の戦略を立て、この年間戦略から計画を推進していること、官僚機構を引き締めようとしていること、このことです。
「世界社会フォーラム」ら、五万人位の人々がやってくると言われています。
ネグリ氏入国不許も、この重要な一環といえます。
洞爺湖サミット粉砕闘争は、この分野からも始められなければなりません。
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塩見孝也 |
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