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「ある獄中者(Fさん)への手紙 (新年の挨拶)」

                    塩見孝也

(T)


 新年明けましておめでとう。今年も、よろしくお願いいたします。

お元気にお暮らしと思うのですが、健康は如何ですか?

Fさんの接見禁止を、Wくんのように何よりも早く解く事が大切かと痛感しています。

 今年も、引き続いてご教示、ご鞭撻、お力添えをお願いします。
 
 僕は、今年からは、「総括」、後ろを振り返ることに重心を置くことをやめ、未来,前に向け,方針,路線を軸に表現と活動に邁進してゆこうとおもっています。

 一応、過去については、気持ちの上で決着が付いたと思えるようになったからです。

 反戦、反安保、反改憲(安保が廃止されるまでは、そうともいえますが、必ずしも“護憲”ではなく、執権勢力のインチキ改憲案を批判しつつ、現憲法をより民衆的、より民主主義的、愛類的に改変してゆくこと---それは決して「プロ独憲法」といった類のものでもありません---そのための憲法議論を排除するのではなく、反対に盛り上げてゆく)の全国民的、全人民的統一、団結に向け頑張ろうと思っています。

 目指すは、60年代に在った「反安保国民会議」のような全国民的な組織が出来上がってゆくようにすることです。

 60年代と違って、非暴力・自主行動の自主、自由な人々の連合を主体とし、それを政党、政派がセクト主義を脱却して、補完するようなものです。

 WPNなどのネットワーク型の組織が軸となり、かつての全共闘の戦う人士や新左翼、ブント系の年配者がその音頭を取ったり、つないで行く、といったイメージです。

 とわ言え、貴方やKさんら、その他武等闘を闘い、投獄され、不当な弾圧を受けている、日本民衆に地の塩となって奉仕している、日本民衆の最良の人々、正真正銘の革命家である、かつての同志達を片時も忘れず、精神、思想と闘いの根本的バネとすることには変わりありません。

 
(U)


 この問題を正しく達成してゆくには以下4つか、5つの思想・哲学、政治、理論問題があると思っています。
 これを、マルクス御教派でも無く、さりとてエコロジーなどに乗り移るマルクス清算派でも無く、マルクス主義止揚派、超克派の立場でやりぬくことだと思っております。
 
 この問題は、基本ベースとしては、僕の見るところ、それは

 [A] 人間の尊厳をどこに求めるか、人間の問題、人間の本性規定、人類は今どういう世界史的位置に
    あるか?人間をどう捉えるか、といった政治上、思想・哲学上の問題があります。

   マルクス思想での人間論を如何に超えるか、という問題でもあります。


 [B] 「民衆論」を新たに確立する問題:民衆論として「マルクス主義」「マルクス・レーニン主義」
    を超克する問題、マルクス思想の歴史的意義と限界をどう捉えるか?

    ブントや赤軍派は一体なんであったか? 日共はどういった歴史的位置を占めていたか? 

    今こそ、ブント結成の歴史的意義を踏まえなおして、日共ではなく、これを継承することの
    大切さの確認。連合赤軍問題は、ここから見て、どのような意味、本質を持っていたか?

    「階級闘争至上」の時代が終焉した中で、マルクスやエンゲルスの言った「生産の社会化と
    所有の私的、資本主義的性格との矛盾」の問題はどう、今貫徹して行っているか?

    「生産の社会化」とは一体如何に捉えるべきか?     


  [C] 民族論の確立の問題:歴史的社的範疇としての「民族」の基本規定、民族形成と国家との
     歴史的連関、それを世界の諸民族を検討しつつ総括する問題、民族と人類の関係をどう
     洞察するか?

     日本民族の歴史的形成、この日本列島という地理、人文との関係、縄文と自主的で、自由な
     「もののふ」の精神との連関、それと天皇家の関連。

     グローバリズムと日本人の内包的、外延的連関、日本人、日本民衆の世界、人類に占める
     独自の役割とは?



 そして、上記の哲学、思想:理論問題のベースを確立した後、実践的政治の課題としては以下6点ぐらいがあると思います。

   @安全保障の問題。
      日米安保への態度、主権と日本列島に住む主として日本人を始めとする諸民族の
      民族問題、パトリオティズムの問題、自衛の在り様の問題 、国の主権と民族の自主、パトリオティズム
      を対置する問題。


   A改憲問題。
      総論をもっと能動的、積極的に展開する、9条と一条のどっちに、どんな風にウエイトを置くかの問題、
      その他付け加える問題。


   B 天皇家の問題。
      この捉え方、対応の仕方とその原則、民族との関連、文化の中での位置。


   C アジア、とりわけ東アジアでの共存、共栄、「極東のEU」の問題。


   D これまでの盗聴法、個人情報保護法案、住民基本台帳、等らに続く共謀罪、監獄法改悪ら
     民主主義破壊に抗して「闘いとる民主主義」『参加する民主主義』の問題。


   E 勤労民衆の生活、経済、労働運動の問題。


 
    これ等実際上の問題に方針を出すことだと思っています。


 以上は僕流の現状把握によって提出される問題です。

日本社会を見渡し、政治思想問題を大局で見た場合こういった問題で煮詰まってゆくように思えます。

 こういった問題を「幸福論」「始末記」「監獄記」らで、特に「幸福論」、で展開してきたつもりですが、貴方には
 [A]、[B]、[C]や@〜Eでの意見を聞かせて欲しいです。

とりわけ、[A]、[B]、[C]は判断しにくい難問題ですが貴方の直感ででも、意見言ってくださればありがたいです。

 貴方の感性、総合的判断力からして、又若干の文章からして、理論化し切れてないが(失礼な言い方を御容赦願います)僕はきわめて近い、か、一致しているのではないか、と強く感じる時があります。

 これは、僕の思い過ごしでしょうか?

 連合赤軍問題については、◯◯◯◯の関係の人は、外国にいたわけで仕方がないのですが、ほとんど真相、事実を知っていないと思っています。

 この僕ですら、やっと事実に即して全体像が掴めたぐらいですから。

 B同志を介したり、僕と永田さん等との訣別の後の、僕が下獄した後の風評の儘であるように思えます。

  この辺は、しっかり考えてくださればありがたいです。

 又、僕が一時政治的に日共、中国党寄りになった時の影響を感じます。

 あの時は、自己否定、止揚の動きが、弾圧や国際、国内情勢に規定され、「階級」から「人間」へ、遡行し、そして、それを踏まえ、「民族と人間の関係」へ上行する、思想的厳しさに耐え切れず、乗り移りの傾向がありました。

 ブント主義、ブント路線からとにかく離れたかった気弱さがが若干あったのです。

 これは『証言』でも明らかにし、自己批判しました。

 それ以前にPR綱領も混乱し、戦後は社会主義革命ですが、戦前は32テーゼの社会認識になっています。
31テーゼで良かったと思います。

 獄は、裁判で追われるところもありますが、ものを考え、勉強し、執筆するには絶好の環境です。
 どうか、貴方が、左翼やもっと広い世間、ジャーナリズムなどでA、B、Cや1〜6の問題で積極的に発言されるよう望みます。

又、映画や歌、踊りら文化について、余裕が出来ましたら、発言され自己表現の妙を発揮されれば,と思います。
 お送りしました、文章は僕のHPで発表したものです。

 「ザ、ラストサムライ、現代にどう“もののふ”精神を蘇えらすか?」は僕の愛着ある文章です。

 女性解放の問題や農民、民衆についての意見が弱いところがあります。

 もう一つの文章は「下克上」ではなく、「出藍の誉れ」を言いたかった、文章です。

 このようなHPに発表する文章は、お手数ですがYさんにお伝えし、コピーをとってもらって、貴方に差し入れしてもらうようにします。

 
(V)


 前便は、実は「かみさんサービス」の、スペイン旅行の前日で時間が無く、ちゃんとしたものが書けませんでした。

僕の欧州旅行のイタリアに次ぐ2回目に当たるものでした。

 貴方は、ヨーロッパはご自分の庭みたいな感じで、飛び回っていたと拝察しますが、スペインは何度も行かれたのではないでしょうか。

 8日間で11万円でした。パックで、旅行シーズンを外したのでこんなに安かったわけです。もっともこうでないと行けません。

 「監獄記」の印税は未だ入っていません。未だ、1刷目ですし。1刷を超えたいところです。一寸した「特別収入」でナントかやりくりしました。

 「塩見(さん)は暢気にやっておられる」と思わないでください。

 一寸した息抜きが必要でした。見聞も広めたかったのです。

 それにスペインは予想通り、歴史や現代史、国際情勢把握で随分と勉強になりました。

 スペイン社会労働党や共産党が「ユーロ・マルクス主義」に転換して行った構造も分かり、現在の我々が遭遇している問題も良く捕らえ返せました。

  又「カタロニア賛歌」のPOUMも興味深く、後考えました。

 京都出身の全共闘世代(20年間滞在)が案内をしており、いろいろ交流し、友人となりました。

 今年は年頭から、会(すでに解散)の新年会や「ジュンク堂」での斉藤貴男さんとのセッションなど飛ばしています。

 高橋伴明さんの新作、「火火(ひび)」が良いです。

 どんな、本を読んでいられますか。

 塩野七生さんの「ローマ人物語」は、若し読んでいなければ是非読んでください。

        では、今日はこれで。  塩見孝也(1・18)