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2月23日の「重信房子さん裁判」における
裁判所の判断を批判する


2006年 2月 25日

                    塩見孝也

1:
この判決文を入手し、仔細に検討したわけでなく、傍聴メモと裁判終了後の弁護団を囲んで、救援者達が、幾つかの重要点を、確認しあったものであり、若干の不正確さも伴うところがあることを予めお断りしておきます。


2:
ライラ・ハリッドさん(パレスチナ国民評議会議員)の、「ハーグ事件は、PFLPの作戦で、その下で日本人の国際義勇軍が動いた」という、極めて重大な証言を全く無視し、「日本人が、日本人を奪還した」という現象的な論に終始しています。

裁判長は、「手紙の件」を証拠採用していないように伺えました(?)。

一方、和光さんの公判では、「元メンバーの供述は、重信被告の関与を強く疑わせるが、重信被告の尋問をしておらず、証拠価値には限界がある(判決文)」として重信被告の共謀を認定しませんでした。

このことにも見られるように、西川純氏への「手紙による指示」の検察側提示の「唯一の物証」が、崩され、公判の維持できなくなった状態で、既に、不当な取調べ時のこととして、法廷で撤回されている戸平さん、行者さんの調書を、逮捕時重信さんが持っていたパソコン・フロッピー(?)の当時の模様書き込みの検討から、それが符合し、証拠性があるという、新手の言説を展開しています。

そこから、「共謀の詳しい内容や時期、場所は明らかでないが、被告がアラブの協力組織を介するなどして、実行犯と共謀したと認められる」とし、「謀議があったとされる時期には、リビアに居て、実行者と謀議するのは不可能」という、弁護側に対して「共謀することは可能で、アリバイとしては成立しない」と断じているわけです。

これこそ、全くの予断と偏見の「推認論」の手法といえます。


3:
和光さんが、執拗に主張している「殺人の意志は無かった」の言に判断を示していません。


4:
それは一面では法匪(ほうひ)的とも言える法律家特有の職業的言い回し、「先達」という曖昧模糊なる言葉を使い、最高責任者か、協力者、幇助者なのからの判断を避け、一方では、無期有罪の根拠あり、としつつ、他方では、有期刑20年の判断を捻出する、八方美人的で玉虫色の、責任回避可能な、「韜晦に付す」量刑判断を展開しています。

全くの、保身的な無責任な判断といえます。


5:
この判決は、総じて、共謀の動機を法律的に明確な形で措定出来ず、その事実関係に至っては、明確に「日時、場所、態様」を措定出来ない、予断と偏見に満ちた、裁判官お得意の「推認論」をふんだんに使った、極めて不公平なものと言えます。

 「思想を裁くのではなく、行為を裁く」法曹上の「基本原理」「基本原則」である「罪刑法定主義」から逸脱し、「テロリズムの元凶」「日本赤軍の最高指導者」といった内容で、重信さんの「思想そのもの」を有罪として裁いています。

「よど号事件」発生、半月前に逮捕され、警視庁で取調べを受けていた僕(塩見)を、当時の佐藤政府と裁判所が「赤軍派議長」という名文を振りかざし、「有罪」と認定した、思考法、手法と、本質的に全く同じであります。

正に「共謀法」制定、実行の「先取り攻撃」と言えます。


6:
弁護団、救援者、家族らは、「不当判決に抗議し、控訴して闘う」ことを確認しましたが、弁護団は、報道によれば、「即日控訴」をしたとのことです。

これは、重信被告と諸救援者たちの、正当な怒りを、自然に発露したもので、僕は、充分に頷けました。