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アメリカ本土での「叛軍闘争」の兆しに注目を


軍産複合体のもたらす出口のない恐怖と絶望


2009年 11月 9日

塩見孝也


 いろんなニュースが、洪水のように流れ込んできます。それぞれ、極めて重要なニュースばかりなので、日記に書き残して置きたいものばかりです。とはいっても、いろんな、具体的な己の身体,生活状況での諸問題も同時に頻発し、心に残りながらも書き残せないでいます。

 その中でも、これはどうしても書き残さなければ、という事件が起こりました。11月6日、アメリカ本土の、それもアメリカ陸軍の最大級の拠点、フォ―トフッドでの精神科の軍医、陸軍少佐、二ダル・マリク・ハサン容疑者の起こした、同僚、13人を射殺する銃乱射事件であります。

  彼は2度イラクに派遣され、3度目のアフガニスタン派遣を目前にしていた、と言われています。オバマ大統領が、このため、日本訪問を一日遅らせた程、この事件は、アメリカ社会では深刻な事件であるといえるであろう。

 アメリカは、「二つの戦場」、イラクとアフガニスタンを抱え、イラクにはこの11月に完全(?)撤兵するとはいえ、いまだ12万の米兵が居り、アフガニスタンには6万数千人の兵士が居り、さらに2万1千人が増派されるという。

 僕らは、オバマ氏の大統領当選でイラクの事は忘れがちですが、いまだアメリカは「二つの戦場」を抱えたままの国家である事を忘れてはならないと思います。

 なんと、まことに愚かしい限りではないでしょうか。

 これは、戦場に派兵される兵士達にとっては大変な事であろう。

 新聞記事によれば、「戦場行きが4度目、5度目というのは珍しくない」という。

 自殺者は昨年の過去最高の133人を、既に117人となり、昨年を上回ることが確実視されています。心的外傷ストレスも激増し、イラクでは「精神科での診察を命じられた兵士が、その精神科医ら5人を殺害する事件が起きている」という。精神科医は、兵士達の恐怖体験を聞き、「癒し」、再び戦場に送り出そうとするマシーンの「操舵手」という、精神的にも、自ら自身が「遭難」せざるを得ないような、むごく、辛い役どころを担わなければなりません。兵士も医師も、両方、出口なしの恐怖の戦場再出征の作業で病み、疲れて行くわけです。



 それにしても、今回の事件は、詳細は別にして、アメリカ本土で、それも最大級の陸軍基地で、しかも中佐の位階を持った精神科軍人の起こした事件です。これまでの厭戦気分の延長ではあるにしても、それが既にその程度を超え、自然発生的な叛軍闘争の質を内包したものに変わりつつあるように僕には思えます。

 人は、生きるに耐え難くなれば、金や栄達も棄てて、自分達を不合理、過酷な死に追いやる軍事機構、自らが所属する軍隊を壊そうとするし、銃口を、この権力秩序に対してむけるようになります。

 この事態は、イラク完全撤退があったとしても、アメリカ軍産複合体、金融独占資本、独占資本が、その危機から脱出、延命を戦争の継続に求める限り、つまり、既にタリバンがその国土の9割を実効支配している、と言われているアフガニスタンで帝国主義侵略戦争を続行してゆく限り、強まりはすれ、決して弱まりはしません。
 
 そして、その過程で、帝国主義者が戦争続行に拘れば拘るほど、アメリカ版「戦艦ポチョムキン」の兵士達の、自然発生性を超えた、今度は、目的意識的内乱が、オバマをも打倒対象として含んで準備されてゆく事態へと展開してゆくでしょう。その時、不滅の堅固きわまるアメリカ帝国主義の牙城とも考えられていた、アメリカ軍産複合体制は瓦解の淵へと追いやれて行くでしょう。

 超巨大帝国主義国家といえども、敗戦は深刻です。

 フランスの対アルジェリア植民地固持の戦争での敗退もフランス、国家、社会を揺れ動かしました。 一応、結果は「愛国者」を看板とするボナパルチスト、フランスレジスタンスの英雄、ド・ゴールによって収拾はされたものの。

 ベトナムでのアメリカの敗北もそうでした。カーターの時、アメリカ帝国主義は自信を喪失しました。折りよく、あの時は、中国が延命の手を差し伸べました。

 旧ソ連ブレジネフ政権は、社会帝国主義者として、アフガニスタン侵略戦争を推進しましたが、この大義なき、泥沼戦争は、結局、ゴルバチョフ政権を経て、資本主義の政権の成立へと到り、最後には、ソ連―東欧体制の瓦解へと連なってゆきました。

 兵士の人命を無視する国家は、それがいかなる超大国であろうと、その体制の根本的瓦解へと到ります。

 漢帝国の朝鮮半島侵略での瓦解、ロシア・ツアー専制帝国の第一次世界大戦での崩壊とロシア革命の成立、歴史を紐解けば、そこでの戦争と革命の問題は無数に例示されます。

 今のアメリカは、あのベトナムで叩き出された敗戦、1975年の深刻さを遥かに超えた、諸問題におけるスーパーな深刻さを内包しています。

 この諸問題の要に位置する軍事と政治にとって、敗戦処理以上にむつかしかしい課題はありません。あるいは、そういった戦争で、殿(しんがり)を務める軍隊ほど非合理な生命の危機、全滅の犠牲を強いられる危険性は圧倒的に高いです。



 オバマ氏は、一方で「イラク撤退」を叫びつつ、他方で、それを引き伸ばし、かつアフガニスタンで戦争を拡大せずしては、帝国主義者としての「面子(名誉)ある撤退はありえない(つまり、そうでない限り、民衆は根本的な変革の道に踏み出してしまう)が立たない」というドロ沼の論理から一歩も抜け出していない政権であることがますます鮮明になって来ているように思えます。

 国際資本主義の心臓部、アメリカでかかる「戦争と革命」の問題が提出されてゆけば、米軍が駐留する、世界での各種、各様の対米安保条約も吹っ飛んでしまいます。日本民衆は、こういった趨勢にある、アメリカ帝国主義の没落、瓦解に一切付き合う必要は全くありません。

 であれば、かかる視野も含み、ゲーツ(この人物は、ブッシュ政権以来のイラク、アフガニスタンの戦争推進当事者でありました。)らのアメリカ執権勢力の強面(こわもて)的対応に惑わされる事なく、その裏側に醸成されつつある根本的動揺をしっかりと見極め、僕ら日本民衆、「国民」、民族は、「9条改憲阻止」を原点に、普天間、嘉手納ら米軍沖縄基地撤去!辺野古新基地建設反対!日本本土のあらゆる米軍基地撤去!日米安保条約破棄!の闘いを、アメリカ民衆の反戦、叛軍闘争と連帯しつつ、粛々と推し進めてゆくべきことが肝要と考えます。「9条を守り抜き、これを思想的、政治的原動力にして日米安保破棄へ!」「この全民衆的政治闘争の高揚をもって、反貧困の闘いを推し進めてゆこう!」、僕ら民衆は独自の革命的第3極潮流を創出しつつ、これから4年間の鳩山政権にヘッジファンドの対応を極力しつつも、言いたいことを言い、政治の大道を歩んでゆかなければなりません。

  自公政権が振りまいた、「対テロリズム戦争」「国際貢献」というまやかしの図式が、命脈を絶たれつつある現在、それに替わる第4次安保闘争の爆発の諸要素は沖縄を最大の政治攻防点に押し上げつつ、あらゆる方面で、じわじわとながらも、不可逆的に醸成されつつあります。



塩見孝也