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洞爺湖G8サミットを糾弾する(下) 

サブプライムローンの意味するもの。
跳梁する投機資本こそネオリベ資本主義の鬼っ子である。
世界金融恐慌、世界過剰生産恐慌とは何か?

2008年 7月 3日

塩見孝也

●世界金融恐慌のとばくち、サブプライムローン問題とは?

昨年初め来、米国サブプライムローン(住宅投資)が問題視され、以降、それが世界金融恐慌、世界過剰生産恐慌の序幕であると予測され始めたのは、昨年末から、今年の2月くらいからではなかったでしょうか。

「貧困ビジネス」と言われる、このプロジェクトを中心とする住宅ローン・バブルは、今は弾けてしまって、米国五大証券会社の一つ、ベアースターンズは、金融市場で融資を受けられなくなり債務不履行(デフォルト)に直面し、米銀行大手JPモルガン・チェースが資金を供給し、かろうじてデフォルト危機を脱しました。

しかし、これは体裁で、実質的には、米連邦準備制度理事会(FRB)―ニューヨーク連銀がソルベンシー(支払い能力)危機の事態に対し、公的資金を投入した、ということです。

FRB議長・バーナンキンは金融システム総体の危機、現代の金融恐慌と捉え、公的救済に踏み込んだわけである。

サブプライムローンは、貧困と居住条件にあえぐ貧困層に、一定の資格を設定し、最初の一定期間の段階は低利子のローンで、そして後半には高利子にしてゆく仕組みで、数千万円のローンを組ませるものでありました。

最初から、払えなくなることを見越し、その手放された物件を、右肩上がりの当時の住宅景気を当て込み、払えなくなって回収された住居を転売し、大もうけせんとする、あくどく、無慈悲なプロジェクトであったわけですが、全体の住宅産業のバブルが弾けてしまい、一挙に破綻し、ベアースターンは資金難に陥ったわけです。

ひとたび、かかる事態が発生すれば、五大証券会社の一つとといえども、諸銀行は貸し渋り、証券市場は協力せず、そのことが、今度は、貸し渋りの側の方に跳ね返って、金融関係を冷え込ませ、この連鎖は、他証券界、他産業部門にも波及し、全体の経済を収縮させてゆきました。

このローンを組んでいたのは、2005年の統計によると、何とアフリカ系アメリカ人の55%、ヒスパニック系アメリカ人の46%と言われています。(白人は、わずか17%)

今これらの人々が、住む家を手放し、居住苦に陥っているわけです。

この社会・政治状況からの不安が、産業、経済界に反作用し、スパイラルしてゆきます。

この事態は、本来であればアメリカ一国の国内問題ですが、このサブプライムローンを組み込んだ巨大な債権が国際証券市場に発行され、それに外国、EU諸国、中国、アジア諸国、日本の金融機関や投資ファンドが巨額な投資を行っていたが故に、世界的規模の金融恐慌に発展する危険が生まれていたのです。

この根元には、2006年〜07年、イラクにおける戦争情勢がはかばかしく進展せず、それまでのアメリカ経済全体にあった戦争景気が終わりかけていた、という大状況的政治経済情勢がありました。

アメリカでは、この住宅バブルの前に、ICバブルがありました。それは、戦争景気に吸収され、事なきを得たわけですが、当今のアメリカ経済の中心に据わる戦争経済が、しぼんでゆくこととなれば、そうであれば、今後、第二、第三のべアースターンズが現れることは必至と思われます。



●エネルギー危機、原油高騰、それに連鎖してゆく食糧危機、その原因は?この連鎖の構造の中心、アメリカの対イラク戦争での敗勢、戦争経済の破綻がある。

今は、この問題に続き、決定的とも言える、原油高騰の問題が加わり、アメリカ−世界の景気を、より一層、落ち込ませていっています。

この原油高騰は、いろんな要素が介在していますが、基本的には、不当・不正義の大義なきアメリカ帝国主義の戦争計画が計画通り進んでゆかず、戦況がベトナム的泥沼常態に陥り、アメリカ経済が戦争経済を中心にしては、回らなくなっていることに起因しています。

このことで、アメリカは、これまでに3兆ドルの、12年間のベトナム戦を上回る、戦争資金を投入しています。

このことを、ノーベル賞経済学者で、クリントン政権の経済政策上のブレインでもあった、ジョセフ・E・スティグリッツは、かれの著書、「世界を不幸にするアメリカの戦争経済(徳間書店、今年5月発刊)」のなかで「ブッシュは3兆ドルをどぶの中に捨てた」と完膚なきまでに批判しています。

僕は、まだ読んでいませんが、彼のその前の著作「世界を不幸にしているグローバリズミムの正体とは?」やこの本の構成・小見出しや大まかな書評を読むだけで、彼がフリードマンらネオリベ経済学者、戦争推進の経済学者たちと真っ向から対立していることが分かります。

戦況の06年以降ぐらいからの、はかばかしさのなさ、敗勢の趨勢化という基本原因に規定され、ブッシュ・アメリカ帝国主義の政治・経済・その他あらゆる方面は、負の要因を噴出させつつ、しかも、それが相互作用を起こしつつ、負の循環、連鎖を作りだしてゆく、局面に入り込んでいるわけです。

考えても見てください、既にスペインは撤兵し、イタリアがそれに続き、ブッシュの盟友、ブレア・イギリスも撤兵し、ブレアは退陣しました。

残っている主要帝国主義はオーストラリア、オランダと日本、韓国ぐらいであり、それに、かつてソ連スターリン主義、社会帝国主義の犠牲にされていたがゆえに、帝国主義政治やネオリベ路線に固執する中・東欧諸国ぐらいだけになっているのです。

ロシア、中国、ドイツ、フランスは最初からイラク侵略戦争には加担していなかったのは周知のことです。

それに、米兵死者は今年になって4000人を超えてしまったのです。

こういった戦局を見据えつつ、その動機、原因、構造は、まだ僕には、しっかりとはつかめていませんが、どうも、産油国、オペック側が意識的に減産、輸出手控えをやっているようにしか思われてなりません。

いずれにしても、こういったオペック側の動きに便乗しつつ、巨額の投機資金がからんでいっていることは確認されるべきでしょう。

その“巨額さ”!、とはどんなイメージで捉えられるべきでしょうか?

一例を挙げてみます。

投機資金は一日15兆ドルも世界を流動します。それに対処する列強のドル保有高は17兆ドルと言われています。であれば、経済上だけでは、投機資金の規制は夢物語と言わなければならないのです。

化石燃料の石油(や石炭)は資本主義経済を支えるエネルギーとして、根幹的存在です。

石油産出機構、オペックが減産し、他方で、先進列強の需要要求が変わらず、中国、インドらの需要増大があるなら、原油が高騰するのも当然ですが、それに、サブプライムローン問題での景気冷え込みの結果、手持ち無沙汰の投機資本が、この原油証券市場に流れ込み、それが、原油高騰の促迫モーメントとして作用し、これまで最高の原油高騰を誘発させているのです。

また、この原油高騰が、あらゆる商品の物価高に連鎖していっていることは、われわれ民衆側にとっては焦眉の問題です。

とりわけ民衆にとって必要不可欠な、食料関係、第一次産品を、この物価高が直撃し、深刻な食料危機が生まれていることです。

このエネルギー危機に対して、その代替物として、バイオ農産物が利用され始め、それが食料高騰の一要因をなしていることも指摘されています。

ここにも、食料のエネルギーへの代替物化に拍車を掛けているのが、これまた投機資本であると言われています。

中南米、南米、フィリッピン、アフリカらの民衆は、降って湧いたかのような、食料メジャーに独占された、食料価格高騰の事態のなかで、生活危機に追い込まれ、飢餓線上あえぐ一部の国も生まれていいます。フィリッピンなどでは、食料暴動が発生しています。

石油高騰は日本をも直撃しています。ガソリンの再値上げは、企業の合理化による対応を吹き飛ばし、成長を停滞させ、食品関係の軒並みの値上げに波及し、庶民の台所事情を逼迫させています。

焼き鳥屋も値上げせざるを得ず、東北のマグロ漁船団は、出航しないことを選びました。それに、福田政権は財政の台所を襲撃され、消費税やタバコ代の値上げしてきています。格差から生まれる、プロレカリアートの貧困と無権利、正規労働者のワーキングプーアの状態、「後期高齢者」の、保険代の切り捨て、といったむちゃくちゃな事態です。

年金問題では、もう、升添は何も言わなくなっています。お手上げ状態だからです。

健在なのは、鳩山(弟)の法相だけという始末です。彼は、「殺人鬼」と言われながら、歴代の法相の中で、最高数の死刑執行判断を出し、洞爺湖サミットに対して、一年ほど前から治安弾圧の計画を立て、民衆弾圧に張り切っています。



塩見孝也