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 「来年の胎動の予感」その2

12・9 「共産義義年史研究集会」に参加して

現代グローバル資本主義と世界・日本の有機的連関性、単一性を持った相対的過剰人口の問題について。
(関西ブント系研究会フォーラム)

2006年 12月 18日

塩見孝也


 12月9日(土)、JR環状線・森之宮の「青少年センタ―」の「関西共産主義年史研究会」・第2回フォーラムに出かけました。

 13:00からの予定でしたが、僕はある人に会うべく10:00過ぎに森之宮駅に着きました。

 その人は、「9条改憲素阻止の会」の提唱者で、実質上の代表者、元桃山大学教授、経済学部長小川登氏にお会いするためです。

その後、二人連れ立って、会場に行く予定でした。

 氏とは、1960年代頃からの知り合いで、大学、学生運動の先輩です。その後、ずっと40年近く、2〜3度お会いしたものの、空白があって、今年「9条改憲阻止の会」で再会した関係です。

 双方、幾つかの報告をし合い、方針・討論や打ち合わせを済ませ、二人で会場に向かいました。

 氏は、精神は矍鑠していますが、もう72歳、腰痛、その他を患われ、杖をつき、ゆっくり、ゆっくりとしか、歩けません。

 やや、痛々しい感じです。

 それでも、氏は10・21の際、最後までデモを貫徹したのでした。

 上記、フォーラムは、今日が2回目で、小川さんは、「9条改憲阻止の会」の特別報告をすべく、招かれたわけです。

 ここで、氏は来年、五月三日の「憲法記念日」での、関西初の「9条改憲阻止」のデモを提唱されました。

 今回のフォーラムでは、もう一つ重要な特別報告が、終了部分でなされました。
 それは、関西の関西ブント系ら新左翼系も、その中の一つの機軸になっての、来年10・21「反改憲、反戦争、主権在民と民主主義を守る」一大民衆集会を実現する計画でした。

 京都、丸山公園を一杯にして、往年の祇園石段下からの川原町デモを敢行する予定(全く、未だイメージの段階)のようでした。

 フォ―ラムは、今夏だったか、第1回目が開かれ「グラムシと現代先進国革命」と題するようなテーマで、八木沢二郎氏とその補足講演を坂部潤氏が行った、と聞いています。

 その、報告レジュメが配布されていました。

 今回は、東北から来られた高橋道郎氏の「チモール問題と国際主義」、補足講演としてのS氏の「現代グローバル資本主義やその資本・景気循環と労働者の国際的、国内的連関関係における状態」であったように思えます。

 この「資本主義と労働問題、人口問題」に、多分、絡んでいたのでしょうが、高橋氏の講演は、チモール民衆・民族の民族独立闘争との氏の30年間の国際主義的連帯の体験報告が基調でしたが、それに留まらず、中嶋氏ら旧関西ブントが提起した「世界同時革命・3ブロック同時革命」の復権、やそれを引き継いだ僕や坂健一ら、「過渡期世界論」の復権(当然にも、批判的総括ももった)などを、共産主義運動再建の機軸に据えなおす主張や戦前「講座」「労農」両派の「日本資本主義論争」を、経済学者、宇野弘三氏が提起した整理の独自の視点、方法から学ぶべき、という重要な問題提起も伴っていました。

 実に、全般的な良き問題提起でした。

 宇野氏の整理の視点、方法の観点は「資本主義と農業問題」を、解明する基本観点を、つまり、農業問題をマルクス「資本論」の「資本主義と人口問題」、「独占資本主義と相対的過剰人口問題」として捉えてゆく観点でした。

 どうも「高橋、S氏」の共通の問題提起は、このような観点で、現在の日本や世界の、連関・循環する関係にある「日本と世界の労働問題、労働者階級の状態」を、「現代グローバル資本主義と人口問題」の視点で解明しようといった、問題提起のように思われました。

 少なくとも僕には、そう受け止められました。

 議論が、このような所に収斂するに及んで俄然、面白くなりました。

 僕と同世代の大管法闘争世代で、このフォーラムの世話人でもあるT氏が、廻し役となりつつ、参加された多くの方々、旭凡太朗氏や僕や旧日向派の渋谷君らが質問したり、発言したりもしました。

 旭氏は、やや取りとめなかったが「資本論」から、この問題を説明しようとしたように思えます。

 この視角は、全く、僕が「情況」11,12月号に発表(その前に、ウェッブ「ぱとり」、7月16日に発表)した「グローバル世界秩序とマルチチュードの可能性」:ネグリ―ハートの『「帝国』書評)」論文の問題意識そのものでしたから、僕も積極的に、2〜3度、意見表明をしました。

 そして、それは当然にも、僕が「現在、『過渡期世界論』をどう総括しているか」にも、若干触れることともなりましたし、現代帝国主義を、レーニン「帝国主義」論に続く、資本主義の第3段階の資本主義:「グローバル帝国主義への到達」の認識やその規定問題に踏みこむ事ともなりました。

 この、「現代世界資本主義論」が、しっかりしてくると、この資本主義論から、世界と日本の、ある種の単一性、有機的連関性を持った人口問題、相対的過剰人口問題、過剰人口の流動性や停滞性、その循環構造などが見えてくるのです。
 僕は、この分野では、僕の「グローバル帝国主義論」の基本基準、規定として持っている

 a,冷戦以降、とみに明瞭になった情報革命などと一体のある人類史上、もっとも包括的で、重層的で有機的連関性を持った単一の世界市場の形成

 b,その資本の直接的生産過程である「工場内分業(資本論)」や資本蓄積の構造が、国際化という形で社会化した点

 この2点を、簡潔に指摘しておきました。

 しかし、このような理論上の「経済学」の問題は、現在の日本資本主義社会に生起している「不正規労働者」、いわゆる「プレカリアート」の問題や正規労働者の深刻な労働問題、或いは外国人労働者の問題、反差別と国際主義的連帯の問題、総じて不当労働条件、低賃金、労働運動の基本権利の剥奪情況、或いは心身の病気問題、過労死、薬物依存症、老年労働者の解雇、年金、福祉における切り捨て問題、年が下っての「閉じ籠り」、リストカッター、さらに年が下ってのいじめ問題等ら総じて、新しい質の貧困や権利、福祉の欠如の問題と一体であること、言い換えれば、今、僕等がとりくんできつつある、フリーターやニートの青年労働者達が口火を切りつつある新しい質の革命的労働運動が要求されていることと不可分一体であることも述べて置きました。

 叉、この問題は、「戦争のできる体制」構築を目指す安倍政権の目論む「9条改憲」やそれに収斂してゆく、諸政治反動との闘いと一体であることも、触れて置きました。
 この点で、資本主義批判・階級闘争と一体の問題として、故平田清明氏の「市民社会と社会主義」での「私的・資本主義的所有の否定の否定としての“個人的、共同体的所有としての再建”のテーマなども重要になってくるのではないか、という問題提起もしました。

 渋谷氏の方からは、氏の意見展開も含ませつつ、柄谷行人氏の新著「世界共和国」の論をどう思うか、という質問がなされました。

 僕は、彼の人間論、共同体論である「互酬論」やマルクス「資本論」・資本主義批判の摂取の曖昧性、或いは「社会を内からでなく、外から捉える視点」、或いは、無媒介な「協同組合論」の導入、ら、多くの引っかかる諸点があることを、述べて置きました。
 それにしても、講演者達、八木沢氏や岩田氏ら司会陣、そして会場からの旭氏や渋谷氏、僕等のやり取りは、十分に知的で、刺激的て、現在の情況を反映する興味あるものだったように思われます。

 東京からも、見覚えのある顔触れが、数人、見えておられたようでした。

 僕も、楽しかったです。

 このフォーラムを準備された方々に、心より感謝するものです。

 次回は、「現代資本主義論」で旭氏がやられるようです。

 叉、「過渡期世界論」の総括もテーマに設定されているようです。

  僕は、二次会に少しだけ参加し、帰京しました。

 小川さんは、旧関西ブント関係の諸氏達と交歓を深められていたようでした。

 僕は、帰りの夜汽車で、次のような想像を逞しくしたのでした。現代グローバル資本主義への反撃の陣形としての、「九条改憲阻止の会」らの地域を拠点とする諸民衆運動と新しい質の労働運動を創造して行く、紐帯に、かつて関西ブントら新左翼が追及した「労研」「社研」ら、原則的マルクス主義、レーニン主義、社会主義を研究・学習する運動が必要なこと、これをもって、新左翼、非新左翼の原則的な労働運動が再建されてゆく課題、そのような労働運動が「9条改憲阻止の会」の民衆的、階級的地盤であるべきことら、このようなイマジネーションを羽ばたかせたのでした。

 そして、つくずくと、良き先輩、仲間が居ることはありがたいことだ、と思ったのでした。

               塩見孝也